オランダでの税務上の居住者判定(日本の居住者・日本人向け)
オランダには滞在日数の基準がなく、住居、家族、仕事、時間を過ごす場所などすべての事情から、オランダとの持続的な個人的つながりがあるかで居住者を判定します。そのつながりは日本とのつながりより強い必要がないため、日本の住所と併せて双方居住者となることがよくあります。その場合は日蘭租税条約第4条第2項で振り分けます。
無料・登録不要、約3分。日本の所得税法に基づく結論を、オランダの法令および租税条約と比較します。
オランダで税務上の居住者とされる場合
オランダには滞在日数の基準がありません。居住は事実関係で決まり、オランダとの持続的な個人的つながり(住居、家族、仕事、時間を過ごす場所)があるかが問われます。そのつながりが日本とのつながりより強い必要はありません。
- オランダの住居に加え、家族、仕事又は時間の大半がオランダにあることは、持続的な個人的つながりです。オランダの居住者である可能性が高く、全世界所得に課税されます。
- オランダに住居はありませんが、年の大半をオランダで過ごしました。オランダの居住者とする有力な(ただし決定的ではない)事情です。すべての事情を総合して判断されます。
非居住者となる場合
- オランダに住居がありますが、家族、仕事又は時間の大半がオランダになければ、持続的なつながりは疑わしく、非居住者である可能性が高いといえます。ただし、税務当局が異なる見方をすることがあります。日本(又はEU/EEA/スイス/BES以外の国)の居住者は適格非居住者の地位を得られないため、オランダの税額控除はなく、所得控除もほとんど受けられません。
- オランダに住居がなく、滞在も長くありません。オランダの非居住者です。オランダで行った勤務の給与はオランダで課税されます(日蘭租税条約第14条の要件による)。日本(又はEU/EEA/スイス/BES以外の国)の居住者は適格非居住者の地位を得られないため、オランダの税額控除はなく、所得控除もほとんど受けられません。
オランダの法令と日本の規定が食い違う点
- 双方居住:オランダは日数を数えず、つながりの強さも比べません. オランダが求めるのはオランダとの持続的な個人的つながりだけで、それが日本とのつながりより強い必要はありません(Hoge Raad BZ6824)。日本も住所(生活の本拠)で判定するため、双方居住者となることは珍しくありません。条約上の居住地は日蘭租税条約第4条第2項で決まります:恒久的住居 → 重要な利害関係の中心 → 常用の住居 → 国籍 → 権限のある当局の合意。
- 家族がオランダにいる場合. 両国に恒久的住居がある場合、日蘭租税条約第4条第2項(a)は重要な利害関係の中心を問います。家族がオランダに住んでいれば、中心はオランダに傾きます(自宅と妻がオランダにあった事件でハーグ高等裁判所がそう判断)。日本に家族を残してオランダに単身赴任している場合は、逆に日本に傾きます。
そのほかの注意点
- オランダでの勤務の給与:日蘭租税条約第14条. 条約上日本の居住者であれば、オランダは、当該課税年度において開始し又は終了するいずれの12か月の期間でもオランダ滞在が合計183日以下で、雇用者がオランダの居住者でなく、オランダの恒久的施設が給与を負担していない場合に限り、オランダで行った勤務の給与に課税しません。一つでも満たさなければオランダが課税し、日本は外国税額控除(第22条、所得税法第95条)で調整します。
- オランダの居住者になった場合の二重課税の調整. 条約上オランダの居住者であれば、日本は日本の国内源泉所得にだけ課税します。オランダは、日本が課税できる所得のうち、例えば日本の不動産所得や日本で行った勤務の給与(第14条第1項)は税の軽減による免除方式で、配当・利子(第10条第2項、第11条第2項)や役員報酬(第15条)などは日本で納めた税の控除で調整します(第22条第4項・第5項)。
- 転入・転出の年:オランダは年を分けます(M申告書). オランダは転入の日から(又は転出の日まで)あなたを居住者とし、その年はM申告書を提出します。条約は期間ごとに適用されます。日本でも、出国の日までが居住者期間、翌日以後が非居住者期間となります。
- 30%ルーリング(2027年から27%). オランダの雇用主が日本からあなたを採用し(勤務開始前24か月のうち16か月超をオランダ国境から150km超の場所に住んでいた)、給与基準を満たせば、最長5年間、給与の最大30%を非課税で受けられます(2026年の上限78,600ユーロ)。2027年1月1日から上限は27%になります(2024年より前に開始したルーリングは30%のまま)。部分的非居住者の選択は2025年分の申告から廃止されています。
- ボックス3:貯蓄と投資のみなし収益への課税. オランダの居住者になると、日本の預金や証券を含む全世界の貯蓄と投資がボックス3に入り、実際の所得ではなくみなし収益に課税されます。実際の収益がより低ければ反証規定(2017年分以降)で還付を求められ、実際収益による課税は2028年の導入が見込まれています。日本で源泉徴収された配当・利子の税がボックス3の税からどこまで控除されるかは本パッケージでは確認していません。
- 社会保障:日蘭社会保障協定(2009年3月発効). 日蘭社会保障協定は保険料の二重負担を防ぎ、年金の加入期間を通算できます。対象は日本側が公的年金制度・公的医療保険制度、オランダ側が公的年金制度・公的医療保険制度・公的雇用保険制度です。一時派遣で日本の制度だけに加入し続けるには、日本年金機構で適用証明書の交付を受けます。派遣期間などの要件は日本年金機構のオランダのページで確認してください(本パッケージでは未確認)。
双方居住者の振り分け
両国があなたを居住者とみなす場合、租税条約第4条第2項が適用されます:日蘭租税条約(英文の正式題名:Convention between the Kingdom of the Netherlands and Japan for the avoidance of double taxation and the prevention of fiscal evasion with respect to taxes on income、2010年8月25日東京で署名)。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順に判定し、それでも決まらない場合は両国の権限ある当局の合意によります。
オランダで目にする用語
- fiscaal inwoner
- オランダの税務上の居住者
- Belastingdienst
- オランダ税務当局
- box 1 / box 2 / box 3
- 所得税の三つの区分:勤労と自宅、相当の持分、貯蓄と投資のみなし収益
- 30%-regeling
- 国外から採用された被用者の給与の一部を非課税とする制度(2027年から27%)
- M-aangifte
- 転入又は転出の年に提出するM申告書
- kwalificerende buitenlandse belastingplichtige
- 適格非居住者。EU/EEA/スイス/BESの居住者に限られ、日本の居住者は対象外
よくある質問
オランダに住居があれば必ず居住者ですか?
いいえ。オランダはすべての事情を総合して、持続的な個人的つながりがあるかを判断します。住居に加えて家族、仕事又は時間の大半がオランダにあれば居住者とされる可能性が高く、住居だけなら非居住者である可能性が高いものの、税務当局が異なる見方をすることがあります。
日蘭租税条約の183日はどう数えますか?
第14条第2項では、当該課税年度において開始し又は終了するいずれの12か月の期間でもオランダ滞在が合計183日を超えないことが要件です。さらに、雇用者がオランダの居住者でなく、オランダの恒久的施設が給与を負担していないことが必要です。
日本から採用されたら30%ルーリングを使えますか?
勤務開始前24か月のうち16か月超をオランダ国境から150km超の場所(日本を含む)に住み、希少な専門性と給与基準を満たせば、最長5年間、給与の最大30%(2027年から27%)を非課税で受けられます。
出典
法令・公式の解説
- Art. 4 AWR — 居住地は、すべての事実と事情に基づいて判断される。滞在日数の固定的な基準はない。
- Art. 2.1 Wet IB 2001 — 居住者は全世界所得に、非居住者はオランダ源泉の所得にだけ所得税を納める。
- Belastingdienst: fiscaal inwoner van Nederland — オランダの税務上の居住者であることの指標:時間の大半をオランダの住所で過ごす、パートナーと家族がオランダにいる、オランダで働いている、保険、かかりつけ医、子の通学、団体への加入。
- Art. 7.8(6) Wet IB 2001 — 適格非居住者の地位(所得の90%以上がオランダで課税される場合に居住者と同じ税額控除・所得控除を受ける)は、EU、EEA、スイス及びBES諸島の居住者に限られる。他の国を指定する仕組みはなく、日本の居住者は利用できない。
- Belastingdienst: aftrekposten en kortingen bij wonen in het buitenland — EU/EEA/スイス/BES以外に住む非居住者が受けられるのは、オランダの事業についての事業者控除とボックス3の非課税枠だけ。一般税額控除の税部分はなく、保険料部分はオランダの社会保険に強制加入している場合に限る。
- Art. 7.2(2)(b) Wet IB 2001 — 非居住者は、オランダで実際に行った勤務の給与に課税される。
- 日蘭租税条約 第14条第2項 — 一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行う勤務の報酬は、次のすべてを満たせば居住地国でのみ課税される:(a) 当該課税年度において開始し、又は終了するいずれの12か月の期間においても、他方の締約国内に滞在する期間が合計183日を超えない;(b) 報酬が他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われる;(c) 報酬が雇用者の他方の締約国内に有する恒久的施設によって負担されない。
- 所得税法 第2条第1項第3号~第5号 — 居住者=国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。非永住者=居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人。非居住者=居住者以外の個人。
- 日蘭租税条約 第4条第2項 — 双方の締約国の居住者に該当する個人の地位:(a) その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなす。双方に恒久的住居を有する場合は、人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心)の居住者とみなす。(b) 重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又は恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合は、常用の住居が所在する締約国。(c) 常用の住居を双方に有する場合又はいずれにも有しない場合は、国民である締約国。(d) 双方の国民である場合又はいずれの国民でもない場合は、両締約国の権限のある当局が合意により解決する。
- 日蘭租税条約 第22条(日本) — 日本:日本の居住者が条約に従いオランダで租税を課される所得をオランダで取得する場合、その所得について納付されるオランダの租税の額は、日本の租税から控除される(外国税額控除に関する日本の法令に従い、その所得に対応する日本の租税の額が限度)。
- 日蘭租税条約 第22条第3項~第6項(オランダ) — オランダ:日本が課税できる所得のうち、第6条第1項・第3項・第4項、第7条第1項、第13条第1項~第4項、第14条第1項・第3項、第17条第1項・第2項、第18条第1項(a)・第2項(a)などの所得は、オランダの二重課税回避の法令に従い計算した税の軽減により免除する(第4項)。第10条第2項、第11条第2項、第15条、第16条第1項・第2項、第17条第3項などの所得は、日本で納付した税の額をオランダの税から控除する(第5項)。
- Belastingdienst: aangifte M — 転入又は転出の年はM申告書を提出する:到着の日から、又は出国の日まで、オランダの居住者となる。
- 国税庁 タックスアンサー No.1926(令和8年4月1日現在) — 国内の会社の給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には国内に住所を有しない者と推定され非居住者となる。年の中途の転出で納税管理人を指定した場合は居住者期間の全所得と非居住者期間の国内源泉所得を翌年2月16日~3月15日に申告し、指定しないで出国する場合は出国の時までに準確定申告をする。国内不動産の賃貸料は原則20.42%で源泉徴収される。
- Belastingdienst: 30%-regeling (expatregeling) — 国外から採用された被用者で、勤務開始前24か月のうち16か月超をオランダ国境から150km超の場所に住み、希少な専門性を有する者(2026年の給与基準48,013ユーロ、所定の修士号を有する30歳未満は36,497ユーロ)は、最長5年間、給与の最大30%を非課税で受けられる。2026年の非課税額の上限は78,600ユーロ。部分的非居住者の選択は2025年分の申告から廃止(2024年の利用者は2026年まで経過措置)。
- Business.gov.nl: 30 percent ruling compensation down to 27 percent — 2027年1月1日から非課税の上限は給与の27%となり、給与基準が引き上げられる(50,436ユーロ、修士号を有する30歳未満は38,388ユーロ)。2024年1月1日より前に開始したルーリングは、その5年間30%のまま。
- Rijksoverheid, 14.03.2025: Wet tegenbewijsregeling box 3 — ボックス3は貯蓄と投資のみなし(forfaitair)収益に課税する。反証規定により、2017年分以降、実際の収益がみなし収益より低いことを示せば税の還付を受けられる。この規定は、2028年の導入が見込まれる実際収益課税(Wet werkelijk rendement box 3)までの暫定措置。
- 日本年金機構 社会保障協定:国別の発効時期と対象となる制度の一覧(2025年10月27日更新) — オランダとの協定は2009年3月発効。対象は日本側が公的年金制度・公的医療保険制度、オランダ側が公的年金制度・公的医療保険制度・公的雇用保険制度。加入期間の通算ができる。
裁判例
- オランダ最高裁判所(Hoge Raad), ECLI:NL:HR:2013:BZ6824, 2013-04-12 — 居住には、オランダとの持続的な個人的つながりが必要である。社会生活の中心がオランダにある必要はない。
- アムステルダム高等裁判所(Gerechtshof Amsterdam), ECLI:NL:GHAMS:2024:721, 2024-01-23 — AWR第4条ではすべての事情を総合的に考慮し、単一の要素で決まるものではない。
- オランダ最高裁判所 法務官(Advocaat-Generaal bij de Hoge Raad), ECLI:NL:PHR:2025:500, 2025-04-25 — 居住は開かれた基準(オランダとの持続的な個人的つながり)であり、双方居住もあり得る。
- オランダ最高裁判所(Hoge Raad), ECLI:NL:HR:2026:1287, 2026-07-17 — 滞在日数の集計に基づく居住の認定(AWR第4条、スイスとの条約)は、集計の対象外の期間については根拠がない。オランダとの持続的なつながりが続いていたことの立証責任は、納税者ではなく税務調査官にある。
- ハーグ高等裁判所(Gerechtshof Den Haag), ECLI:NL:GHDHA:2020:389, 2020-02-25 — 他国で勤務していたが、妻が住むオランダの自宅があった事件。双方の国に恒久的住居があり、重要な利害関係の中心はオランダにあるとされた。
更新日 2026-11-04. 結果は情報提供のみを目的とするもので、税務上・法律上の助言ではありません。税務当局や裁判所は、ここで考慮していない事情も含めて異なる解釈をすることがあり、法令も改正されます。判断の前に専門家にご相談ください。