チェコでの税務上の居住者判定(日本の居住者・日本人向け)
チェコは、チェコに恒久的な住居(bydliště)があるか、暦年に183日以上滞在すれば居住者とし、183日に達した場合は1月1日に遡って居住者となります。日本は住所(生活の本拠)又は1年以上の居所で判定します。2026年分に適用される1977年の条約には恒久的住居などの振分け基準がなく、双方居住者は両国の権限のある当局の合意で決まります。新条約は2026年3月に実質合意されましたが、まだ署名されていません。
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チェコで税務上の居住者とされる場合
チェコ法は生活上の利害の中心を判定しません。チェコに恒久的な住居(bydliště)があるか、暦年に183日以上滞在すれば足ります。チェコの課税期間は日本と同じ暦年です。
- チェコに恒久的な住居(bydliště)があるため、家族がどこに住んでいても、チェコ法上はその住居が生じた日からチェコの居住者です。
- 暦年にチェコに183日以上滞在しました。その年全体について、1月1日に遡ってチェコの居住者です。
非居住者となる場合
- チェコには留学又は治療のためだけに滞在しています。所得税法第2条第3項により、183日以上でも非居住者です。
- チェコに恒久的な住居がなく、滞在は183日未満です。チェコの非居住者です。チェコ源泉の所得(チェコで実際に行った勤務の給与を含む)には引き続き課税されます。
チェコの法令と日本の規定が食い違う点
- 衝突:両国の居住者 — 日チェコ租税条約には振分けの基準がありません. 日チェコ租税条約(1977年に旧チェッコスロヴァキアと署名、チェコが承継)第4条第2項は、恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍といった判定基準を定めず、両国の権限のある当局が合意によって居住地国を決定するとだけ定めています。合意があるまでは、日本もチェコもあなたを居住者として全世界所得に課税し得ます。チェコ源泉の所得に課されたチェコの税は日本の外国税額控除(第23条(a)、所得税法第95条)で調整し、日本で課税され得る所得はチェコで免除又は税額控除されます(第23条(b))。相互協議の申立ては、最初の通知の日から3年以内に居住地国の権限のある当局に行います(第25条、MLI第16条)。
- 衝突:チェコに住居があれば、それだけでチェコの居住者. チェコ法は生活上の利害の中心を見ず、恒久的に住む意思を伴うチェコの住居(bydliště)があれば、家族と経済生活が日本にあっても居住者とします(最高行政裁判所 10 Afs 195/2017)。日本も生活の本拠が日本にあれば居住者とするため、両国の居住者となり得ます。日チェコ租税条約には振分けの基準がなく、両国の権限のある当局の合意で解決します。
- 衝突:チェコに183日 — 1月1日に遡ってチェコの居住者. チェコは暦年に183日以上滞在した人を、その年の1月1日に遡って居住者とします。1年未満の赴任で日本の住所を残していれば、日本でも居住者のままとなり得ます(所得税法施行令第15条の推定が働かない)。日チェコ租税条約では恒久的住居による振分けができず、両国の権限のある当局の合意が必要です。また、チェコでの滞在が暦年で183日を超えると、その年のチェコでの勤務の給与は条約第15条第2項の免税を受けられません。
そのほかの注意点
- 二つの異なる基準:日本は住所・1年以上の居所、チェコは恒久的住居又は183日. 日本は、生活の本拠(住所)が日本にあるか、日本に引き続き1年以上居所があるかで居住者を判定し、滞在日数の基準はありません。チェコは、チェコに恒久的な住居(bydliště)があるか、暦年に183日以上滞在すれば居住者とし、生活上の利害の中心は判定しません。両国の居住者となることもあり得ますが、日チェコ租税条約は、双方居住者の振分けを両国の権限のある当局の合意に委ねています(第4条第2項)。
- チェコでの勤務の給与:日チェコ租税条約第15条. チェコで実際に行った勤務の給与は、雇用者が日本の会社でもチェコ源泉の所得です。条約上日本の居住者であれば、チェコでの滞在が当該年(暦年)を通じて合計183日以下で、給与をチェコ居住者でない雇用者が支払い、チェコの恒久的施設又は固定的施設が負担していなければ、チェコは課税しません(第15条第2項)。一つでも満たさない場合、チェコが課税し、日本は外国税額控除(第23条(a)、所得税法第95条)で調整します。チェコは入国日・出国日を両国の日として数えます。
- 二重課税の調整:日本は税額控除、チェコは主に免除. 日本の居住者は、チェコで課された税を日本の所得税から差し引きます(第23条(a)、所得税法第95条)。限度はその所得に対応する日本の税額です。チェコの居住者については、日本で課税され得る所得(日本で行った勤務の給与など)をチェコが免除し、残りの所得の税率計算でだけ考慮できます(第23条(b)(i))。配当・利子・使用料などは日本の税をチェコの税から控除します(同(ii))。チェコで条約の適用を受けるには、日本の税務署で居住者証明書の交付を受けて提出します。
- 移住の年:チェコは年を分割することがあります. チェコの税務当局は、租税条約に基づき年の一部はチェコの居住者、残りは他国の居住者とする年の分割(dělená rezidence)を認めています。日本も、出国の日までを居住者期間、その翌日以後を非居住者期間として扱います。日チェコ租税条約には振分けの基準がないため、分割が認められるかは権限のある当局の判断によることがあります。両国の課税期間はいずれも暦年です。
- 社会保障:日チェコ社会保障協定(2009年6月発効). 日チェコ社会保障協定は、保険料の二重負担を防ぎ、年金の受給資格を判断する際に両国の加入期間を通算できるようにするものです。対象は日本側が公的年金制度と公的医療保険制度、チェコ側が公的年金・公的医療保険・公的雇用保険制度です(改正議定書は2018年8月1日発効)。一時派遣で日本の制度だけに加入し続けるには、日本年金機構で適用証明書の交付を受けます。派遣期間などの要件は日本年金機構のチェコのページで確認してください(本パッケージでは未確認)。
- 新しい日チェコ租税条約は署名前 — 2026年分は1977年の条約. 日本とチェコは、2026年3月13日に、旧チェッコスロヴァキアとの条約に代わる新しい租税条約について実質合意しました。署名は両国の国内手続の後で、日本では国会の承認を経て発効します。2026年分には、現行の1977年の条約(BEPS防止措置実施条約で一部修正)が適用されます。新条約が発効すれば、居住者の振分けの規定も変わる可能性があります。
双方居住者の振り分け
両国があなたを居住者とみなす場合、租税条約第4条第2項が適用されます:所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とチェッコスロヴァキア社会主義共和国との間の条約(1977年10月11日署名、チェコが承継)。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順に判定し、それでも決まらない場合は両国の権限ある当局の合意によります。
チェコで目にする用語
- daňový rezident
- チェコの税務上の居住者。全世界所得に課税
- bydliště
- 恒久的に住む意思を伴う恒久的な住居。これだけで居住者となる
- obvyklé zdržování
- 通常の滞在。暦年に183日以上(始まった日も数える)
- dělená rezidence
- 条約に基づく年の分割。年の一部だけチェコの居住者となる
- ZDP(zákon o daních z příjmů)
- チェコの所得税法(1992年法律第586号)
- Finanční správa
- チェコの税務当局(財務総局 GFŘ を含む)
よくある質問
日本とチェコの両方で居住者になった場合、どちらの国の居住者になりますか?
現行の日チェコ租税条約第4条第2項は、恒久的住居や重要な利害関係の中心などの基準を定めず、両国の権限のある当局が合意で決定するとしています。合意があるまでは両国が居住者として課税し得るため、日本の外国税額控除とチェコの免除又は税額控除で調整し、残る二重課税は最初の通知から3年以内に相互協議を申し立てて解決を求めます。
日チェコ租税条約の183日ルールはどう数えますか?
第15条第2項では、当該年(暦年)を通じてチェコでの滞在が合計183日を超えないこと、給与がチェコ居住者でない雇用者から支払われること、チェコの恒久的施設又は固定的施設が負担しないことがすべて必要です。チェコは入国日と出国日も1日と数えます。
新しい日チェコ租税条約はいつから適用されますか?
2026年3月13日に実質合意されましたが、署名と両国の国内手続(日本では国会の承認)がまだで、発効日は決まっていません。2026年分には1977年の条約が適用されます。
出典
法令・公式の解説
- § 2(2) of Act No. 586/1992 Coll. on Income Taxes (ZDP) — チェコに住所(bydliště)を有し、又は通常滞在する者はチェコの税務上の居住者であり、全世界所得に課税される。
- § 2(4) ZDP — 暦年にチェコに継続して又は複数回で合計183日以上滞在する者は通常滞在するものとし、始まった日はすべて数える。住所(bydliště)とは、恒久的に滞在する意思を示す状況の下で有する恒久的な住居をいう。
- Czech General Financial Directorate (GFŘ), «Informace k určování daňové rezidence fyzických osob», ref. 39105/26/7100-20113-010370 (2026) — 183日に達すると1月1日に遡って居住者となる。住所は生じた日から居住者となる。租税条約に基づく年の分割(dělená rezidence)があり得る。入国日・出国日は両国で数えられる。滞在許可や健康保険の国は関係ない。立証責任は納税者にある。
- § 2(3) ZDP — 留学又は治療のためだけにチェコに滞在する者は、通常滞在していても非居住者である。
- § 22(1)(b) ZDP — チェコで行われた勤務の給与は、雇用者が誰であってもチェコ源泉の所得となる。
- 所得税法 第2条第1項第3号~第5号 — 居住者=国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。非永住者=居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人。非居住者=居住者以外の個人。
- 日チェコ租税条約(旧チェッコスロヴァキアとの条約) 第4条第2項 — 1の規定によって双方の締約国の居住者となる個人については、権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その個人が居住者であるとみなされる締約国を決定する。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍による判定基準は定められていない。
- 日チェコ租税条約 第23条(a) — 日本:日本の居住者がチェコで条約に従い租税を課される所得を取得する場合、チェコの租税の額は日本の租税から控除される。控除の額は、日本の租税の額のうちその所得に対応する部分を超えない。
- 日チェコ租税条約 第23条(b) — チェコ(チェッコスロヴァキア):(i) 条約により日本で課税され得る所得は原則として免除する。残余の所得に対する租税の計算には、免除が行われないとしたならば適用されたであろう税率を適用できる。(ii) 配当、利子、使用料など(ii)に掲げる所得については、日本で納付される租税の額と等しい額をチェコの租税から控除する(その所得に対応するチェコの税額が限度)。
- 日チェコ租税条約 第25条 — 相互協議:条約の規定に適合しない課税を受けたと認める者は、居住地国の権限のある当局に申し立てることができ(MLI第16条1により、最初の通知から3年以内)、権限のある当局は合意によって事案を解決するよう努める。
- BEPS防止措置実施条約(日チェコ租税条約への適用;財務省「チェコ」のページ) — MLIは日本について2019年1月1日、チェコについて2020年9月1日に発効。適用条項は第6条1(前文)、第7条1(主要目的テスト)、第16条1・2(相互協議:最初の通知から3年以内の申立て、合意の実施)。第4条・第5条は適用されない。源泉徴収以外の租税については2021年3月1日以後に開始する課税期間から、相互協議は2020年9月1日以後の申立てに適用。
- 所得税法 第95条;国税庁 タックスアンサー No.1240 — 居住者が外国所得税を納付する場合、控除限度額(その年分の所得税額×調整国外所得金額/所得総額)を限度として所得税額から控除し、超える部分は復興特別所得税の控除限度額まで控除する。控除余裕額・控除限度超過額は3年間繰越し可。非永住者の国外所得は国内払い・送金分に限る。条約上の限度税率を超える部分は対象外。申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を課されたことを証する書類を添付する。
- 所得税基本通達 2-1~2-4 — 住所とは各人の生活の本拠をいい、客観的事実によって判定する(2-1)。国外に赴いた目的が明らかに一時的なとき(配偶者等を国内に残す、再入国後に住む家屋を保有する等)は、在外期間中も国内に居所を有するものとする(2-2)。入国後1年を経過する日まで住所がない場合はその日まで非居住者、翌日以後は居住者(2-3)。「1年以上」の起算日は入国の日の翌日(2-4)。
- 所得税法施行令 第15条 — 国外に居住することとなった個人が、①国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合、又は②外国の国籍若しくは外国の永住許可を有し、国内に生計を一にする親族がいないなど、再び国内に帰り主として国内に居住すると推測するに足りる事実がない場合には、国内に住所を有しない者と推定する。生計を一にする同居家族も同様。
- 日チェコ租税条約 第15条第2項 — 一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行う勤務の報酬は、次のすべてを満たせば居住地国でのみ課税される:(a) 報酬の受領者が当該年を通じて合計183日を超えない期間他方の締約国内に滞在する;(b) 報酬が他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われる;(c) 報酬が他方の締約国内に雇用者の有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されない。
- § 38f ZDP — 二重課税は、適用される租税条約の定めるところにより、通常の税額控除又は累進付免除の方法で排除される。
- 国税庁 タックスアンサー No.9210 居住者証明書の請求 — 租税条約に基づく減免等を受けるために必要な日本の居住者であることの証明書は、所轄の税務署が発行する。居住者証明書(2部)と交付請求書を郵送又は来署で提出する。相手国が様式を定めていればその様式、なければ国税庁様式を使う。
- 国税庁 タックスアンサー No.1926(令和8年4月1日現在) — 国内の会社の給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には国内に住所を有しない者と推定され非居住者となる。年の中途の転出で納税管理人を指定した場合は居住者期間の全所得と非居住者期間の国内源泉所得を翌年2月16日~3月15日に申告し、指定しないで出国する場合は出国の時までに準確定申告をする。国内不動産の賃貸料は原則20.42%で源泉徴収される。
- 日本年金機構 社会保障協定:国別の発効時期と対象となる制度の一覧(2025年10月27日更新) — チェコとの協定は2009年6月発効(改正議定書は2018年8月1日発効)。対象は日本側が公的年金制度・公的医療保険制度、チェコ側が公的年金制度・公的医療保険制度・公的雇用保険制度。加入期間の通算ができる。
- 財務省 報道発表「日・チェコ新租税条約の実質合意」(2026年3月13日) — 日本とチェコは、現行の日本とチェッコスロヴァキアとの条約(1978年発効)に代わる新しい租税条約について実質合意した。署名は両国政府の国内手続の後に行われ、日本では国会の承認を経て発効する。日本とスロバキアとの間の現行条約には影響しない。
裁判例
- チェコ最高行政裁判所(Nejvyšší správní soud), 10 Afs 195/2017-57, 2018-07-16 — 所得税法は生活上の利害の中心という概念を用いていない。住所(bydliště)にとって重要なのは、恒久的に住む意思を伴うチェコの恒久的住居であり、国外の家族は国内法上関係がない。
- チェコ最高行政裁判所(Nejvyšší správní soud), 7 Afs 251/2014-40, 2015-01-22 — 住所(bydliště)は登録上の住所や不動産の所有と同じではなく、これらは間接的な指標にすぎない。国外での仕事、学業及び家族を考慮せず登録だけに基づく結論は審査に耐えない。
更新日 2026-11-04. 結果は情報提供のみを目的とするもので、税務上・法律上の助言ではありません。税務当局や裁判所は、ここで考慮していない事情も含めて異なる解釈をすることがあり、法令も改正されます。判断の前に専門家にご相談ください。