カナダでの税務上の居住者判定(日本の居住者・日本人向け)
カナダは事実関係で居住者を判定します。住居、配偶者・パートナー、扶養家族といった重要な居住上のつながりがあれば到着の日から居住者となり、つながりがなくても年に183日以上滞在すればその年を通じて居住者とみなされます。日本は住所(生活の本拠)又は1年以上の居所で判定するため、両国の居住者となった場合は日加租税条約第4条第2項と議定書2の原則により、両国の権限のある当局が振り分けます。
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カナダで税務上の居住者とされる場合
カナダの居住は事実関係で判断されます。重要な居住上のつながり(住居、配偶者又はパートナー、扶養家族)があれば居住者となり、それがなくても年に183日以上滞在すれば居住者とみなされます。
- カナダと重要な居住上のつながり(住居、配偶者・パートナー又は扶養家族)があります。到着の日からカナダの事実上の居住者となり、全世界所得に課税されます。
- その年にカナダに183日以上滞在しました。所得税法第250条第1項(a)により、その年を通じてカナダの居住者とみなされます。
非居住者となる場合
- カナダとの重要な居住上のつながりがなく、滞在も183日未満です。カナダの非居住者です。ただし、カナダで実際に行った勤務の給与はカナダで課税されます。
カナダの法令と日本の規定が食い違う点
- 衝突:カナダに住居があると到着の日から居住者. カナダに所有又は賃借していつでも使える住居があることは重要な居住上のつながりで、カナダは日数を数えずに到着の日からあなたを居住者とします。日本にも住所があれば双方居住者です。日加租税条約では、双方居住者の地位は両国の権限のある当局が合意により決定するとされ(第4条第2項)、その際に議定書2の原則(恒久的住居 → 重要な利害関係の中心 → 常用の住居 → 国籍)を適用します。振分けに争いがあれば、相互協議の申立てが必要です。
- 衝突:家族がカナダに住んでいるとカナダの居住者. 配偶者、パートナー又は扶養家族がカナダにいることは重要な居住上のつながりで、カナダは183日未満でもあなたを事実上の居住者とします。日本の住所も維持していれば双方居住者となり、日加租税条約の原則で判定します。家族だけでは「恒久的住居」になりませんが、両国に恒久的住居がある場合の重要な利害関係の中心の判断では家族の所在が大きな比重を持ちます。
- 衝突:日本の居住者のままカナダに183日以上滞在. カナダは183日以上滞在した人をその年を通じて居住者とみなし、日本は住所があれば居住者とします。条約上日本の居住者とされれば、所得税法第250条第5項によりカナダの非居住者とみなされます。それでもカナダは、カナダで行った勤務の給与に課税できます。ただし、暦年(当該年)を通じたカナダ滞在が合計183日以下で、給与をカナダ居住者でない雇用者が支払い、カナダの恒久的施設又は固定的施設が負担していなければ、カナダでは課税されません(第15条第2項)。
そのほかの注意点
- 二つの異なる基準:日本は住所・1年以上の居所、カナダは居住上のつながりと183日. 日本は、生活の本拠(住所)が日本にあるか、日本に引き続き1年以上居所があるかで居住者を判定します。カナダは、住居、配偶者・パートナー、扶養家族といった重要な居住上のつながりがあれば到着の日から居住者とし、つながりがなくても年に183日以上滞在すればその年を通じて居住者とみなします。両国の居住者となった場合は日加租税条約で振り分けます。
- 条約が優先し、地位は年の途中で変わり得ます. 所得税法第250条第5項により、租税条約上他方の国の居住者である人はカナダの非居住者とみなされます。カナダの裁判所は条約上の居住地を特定の日を基準に判定するため、年の途中で地位が変わることがあります(Davis 2018 TCC 110、Tanga 2024 TCC 80 — いずれも他の条約の事例)。入国時の地位についてはNR74でCRAに見解を求められます。
- カナダでの勤務の給与:暦年183日ルール(第15条第2項). 給与は実際に勤務した場所で課税されます。カナダから日本の雇用主のためにリモートで働くことも、カナダで行う勤務です。条約上日本の居住者であれば、暦年(当該年)を通じたカナダ滞在が合計183日以下で、雇用者がカナダの居住者でなく、カナダの恒久的施設又は固定的施設が給与を負担していない場合に限り、カナダでは課税されません。日加租税条約の期間は「いずれの12か月」ではなく暦年である点に注意してください。カナダで課税された場合、日本は外国税額控除(第21条第2項(a))で調整します。
- 二重課税の調整:日本もカナダも税額控除. 条約上日本の居住者であれば、カナダで納めた税を日本の所得税から差し引きます(第21条第2項(a)、所得税法第95条)。限度はその所得に対応する日本の税額です。条約上カナダの居住者であれば、日本は国内源泉所得にだけ課税し、カナダがその日本の税をカナダの税から控除します(第21条第1項(a)、カナダ所得税法第126条)。
- 到着と出国:年の一部の居住、取得価額の引直し、出国税. 到着の年、カナダは居住者となった日からの全世界所得にだけ課税し(第114条)、大部分の財産はその日に公正市場価額で取得したものとみなされます(第128.1条第1項)。カナダを離れるときは、大部分の財産を公正市場価額で処分したものとみなされます(同条第4項、出国税)。日本でも、1億円以上の有価証券等を持って出国する場合は国外転出時課税の対象となり得ます。
- 社会保障:日加社会保障協定(2008年3月発効). 日加社会保障協定は保険料の二重負担を防ぎ、年金の加入期間を通算できます。対象は日本側が公的年金制度、カナダ側が公的年金制度で、ケベック州年金制度は対象外です。一時派遣で日本の年金制度だけに加入し続けるには、日本年金機構で適用証明書の交付を受けます。派遣期間などの要件は日本年金機構のカナダのページで確認してください(本パッケージでは未確認)。
双方居住者の振り分け
両国があなたを居住者とみなす場合、租税条約第4条第2項、議定書2(a)が適用されます:所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカナダ政府との間の条約(1986年5月7日東京で署名、1999年2月19日署名の議定書による改正後)。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順に判定し、それでも決まらない場合は両国の権限ある当局の合意によります。
カナダで目にする用語
- factual resident
- カナダとの重要な居住上のつながりにより居住者となる人
- deemed resident
- 年に183日以上滞在したことによりカナダの居住者とみなされる人
- significant residential ties
- 重要な居住上のつながり:住居、配偶者又はコモンロー・パートナー、扶養家族
- departure tax
- カナダの居住者でなくなるときに財産を時価で処分したとみなす課税(所得税法第128.1条第4項)
- CRA
- カナダ歳入庁(Canada Revenue Agency)
- NR74
- カナダ入国時の居住者の地位についてCRAの見解を求める様式
よくある質問
日加租税条約の183日はどう数えますか?
第15条第2項では、暦年(当該年)を通じたカナダ滞在が合計183日を超えないことが要件です。さらに、給与がカナダ居住者でない雇用者から支払われ、カナダの恒久的施設又は固定的施設が負担していないことが必要です。いずれかを満たさなければ、カナダでの勤務分の給与はカナダで課税されます。
日本とカナダの両方の居住者になったらどうなりますか?
日加租税条約では、双方居住者の地位は両国の権限のある当局が合意により決定します(第4条第2項)。その際、恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順の原則(議定書2)を適用します。条約上日本の居住者とされれば、カナダ所得税法第250条第5項によりカナダの非居住者とみなされます。
日加社会保障協定はありますか?
あります。2008年3月に発効し、保険料の二重負担を防ぎ、年金の加入期間を通算できます。カナダ側はケベック州年金制度を除く公的年金制度が対象です。
出典
法令・公式の解説
- Income Tax Act, s. 2(1), 2(3) — その年のいずれかの時点でカナダの居住者である者は全世界所得に所得税を納め、非居住者はカナダで得た所得にだけ納める。
- CRA Income Tax Folio S5-F1-C1, «Determining an Individual's Residence Status» — 事実上の居住は、カナダとの重要な居住上のつながり(所有又は賃借していつでも使える住居、配偶者又はコモンロー・パートナー、扶養家族)で決まる。副次的なつながり(自動車、州の医療保険、銀行口座、就労許可)は総合的に考慮される。1日の一部でも1日と数える。
- Income Tax Act, s. 250(1)(a) — その年にカナダに合計183日以上滞在(sojourn)した者は、その年を通じてカナダの居住者とみなされる。
- Income Tax Act, s. 115(1)(a)(i) — 非居住者は、カナダで行った勤務からの所得に課税される。
- 所得税法 第2条第1項第3号~第5号 — 居住者=国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。非永住者=居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人。非居住者=居住者以外の個人。
- 日加租税条約 第4条第2項、議定書2(a) — 第4条第2項:双方の締約国の居住者に該当する者について、両締約国の権限のある当局は、合意により、条約の適用上その者が居住者であるとみなされる締約国を決定する。議定書2:双方居住者に該当する個人については、次の原則を適用して合意により解決する — (i) 恒久的住居が存在する締約国、双方にあれば人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心);(ii) 重要な利害関係の中心を決定できない場合又は恒久的住居をいずれにも有しない場合は常用の住居が存在する締約国;(iii) 常用の住居を双方に有する場合又はいずれにも有しない場合は国民である締約国。
- Income Tax Act, s. 250(5) — 租税条約上、他方の国の居住者であってカナダの居住者でない者は、カナダの非居住者とみなされる。
- 日加租税条約 第15条第2項 — 一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行う勤務の報酬は、次のすべてを満たせば居住地国でのみ課税される:(a) 報酬の受領者が当該年を通じて合計183日を超えない期間他方の締約国内に滞在する(英文:in the calendar year concerned);(b) 報酬が他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われる;(c) 報酬が雇用者の他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されない。
- CRA: Determining your residency status (NR74 / NR73) — カナダに入国する際の居住者の地位についてCRAの見解を求める様式がNR74、出国する際がNR73。
- 日加租税条約 第21条第2項(a) — 日本:日本の居住者が条約に従いカナダで租税を課される所得をカナダにおいて取得する場合、その所得について納付されるカナダの租税の額は、日本の租税の額から控除する(外国税額控除に関する日本の法令に従う)。控除額は、その所得に対応する日本の租税の額を超えない。
- 日加租税条約 第21条第1項(a) — カナダ:日本で生じた利得、所得又は収益について日本で納付される租税は、カナダの外国税額控除に関する法令に従い、カナダの租税から控除される。
- 所得税法 第95条;国税庁 タックスアンサー No.1240 — 居住者が外国所得税を納付する場合、控除限度額(その年分の所得税額×調整国外所得金額/所得総額)を限度として所得税額から控除し、超える部分は復興特別所得税の控除限度額まで控除する。控除余裕額・控除限度超過額は3年間繰越し可。非永住者の国外所得は国内払い・送金分に限る。条約上の限度税率を超える部分は対象外。申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を課されたことを証する書類を添付する。
- Income Tax Act, s. 114 — 年の一部だけ居住者である者は、カナダの居住者である期間についてのみ全世界所得に課税される。
- Income Tax Act, s. 128.1(1), (4) — 移住(第128.1条第1項):居住者となった時に、大部分の財産を公正市場価額で処分し再取得したものとみなす。国外移住(同条第4項):居住者でなくなった時に、大部分の財産を公正市場価額で処分したものとみなす(出国税)。
- CRA: Newcomers to Canada and the CRA — カナダとの重要な居住上のつながりができた時に税務上の居住者となる。多くの新規移住者は、カナダに住み始めた初日から居住者となる。
- 所得税法 第60条の2;国税庁 タックスアンサー No.1478 — 国外転出の時に1億円以上の有価証券等を所有等し、国外転出の日前10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年を超える居住者は、含み益に所得税が課される(国外転出時課税)。納税管理人の届出と担保提供等により5年(延長で最長10年)納税猶予。5年(10年)以内に帰国すれば課税の取消しが可能(帰国の日から4か月以内に更正の請求等)。
- 日本年金機構 社会保障協定:国別の発効時期と対象となる制度の一覧(2025年10月27日更新) — カナダとの協定は2008年3月発効。対象は日本側が公的年金制度、カナダ側が公的年金制度(ケベック州年金制度を除く)。加入期間の通算ができる。
- Income Tax Act, s. 126 — カナダの居住者は、外国の所得税を(法定の算式の範囲内で)カナダの税額から控除する。
裁判例
- カナダ租税裁判所(Tax Court of Canada), Biya v. The Queen, 2020 TCC 113, 2020-10-13 — 納税者はエチオピアで勤務していたが、家族と生活上のつながりはカナダに残っていたため、カナダの居住者とされた(「カナダでの定着した生活」)。
- カナダ租税裁判所(Tax Court of Canada), Corkum v. The Queen, 2015 TCC 38, 2015-02-23 — 家族は長年エジプトに住んでおり、通常の居住地はエジプトにあったため、カナダの居住者の地位は失われていたとされた。
- カナダ租税裁判所(Tax Court of Canada), Nonis v. The Queen, 2021 TCC 31, 2021-04-14 — 非居住者がカナダで課税されるのは、カナダで実際に勤務した日数に対応する給与の部分に限られる。
- カナダ租税裁判所(Tax Court of Canada), Davis v. The Queen, 2018 TCC 110, 2018-06-14 — カナダ・米国租税条約第4条第2項の適用事例。両国に恒久的住居があり重要な利害関係の中心が決まらないため常用の住居で判定し、401(k)の払出しを受けた日に納税者は米国の居住者であったから、カナダでは課税されないとされた。条約上の居住地は特定の日を基準に判定される。
- カナダ租税裁判所(Tax Court of Canada), Tanga v. The King, 2024 TCC 80, 2024-05-31 — カナダとカメルーンの双方居住者の事件。カナダの住所はいつでも使える住居ではなく、当該条約第4条と所得税法第250条第5項により、問題の期間はカナダの非居住者とみなされた。
更新日 2026-11-04. 結果は情報提供のみを目的とするもので、税務上・法律上の助言ではありません。税務当局や裁判所は、ここで考慮していない事情も含めて異なる解釈をすることがあり、法令も改正されます。判断の前に専門家にご相談ください。