ドイツでの税務上の居住者判定(日本の居住者・日本人向け)
ドイツは、いつでも使える住居(Wohnsitz)があるか、6か月を超えて継続して滞在(年をまたいでも可)すれば居住者とし、全世界所得に課税します。日本は住所(生活の本拠)又は引き続き1年以上の居所で判定し、日数の基準はありません。両国の居住者となった場合は日独租税協定第4条第2項で振り分けます。ドイツは日本で課税される所得を原則として免除し(累進留保)、日本は外国税額控除で調整します。
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ドイツで税務上の居住者とされる場合
ドイツでは住居そのものが決め手です。いつでも使える住まいや部屋を保持していれば、滞在日数や重要な利害関係の中心がどこにあるかにかかわらず居住者となります。
ドイツの6か月は継続した期間で数え、暦年に縛られません。10月から翌年4月までの滞在でも常居所が生じます。
- ドイツに住居があります — § 8 AOの住所(Wohnsitz)に当たり、重要な利害関係の中心が日本にあっても、ドイツ法上は無制限納税義務を負う居住者です。
- 訪問や休暇以外の目的で6か月を超えてドイツに継続して滞在しました — § 9 AOにより初日から常居所があり、ドイツの居住者です。
非居住者となる場合
- 滞在は1年以内の訪問、休暇又は治療のみで、ドイツに住居もありません — 常居所は生じず、ドイツの居住者ではありません。
- ドイツに住居がなく、継続した滞在も6か月を超えていません — ドイツの居住者ではありません。ただし、ドイツ国内源泉所得(特にドイツで実際に行った勤務の給与)には制限納税義務が生じます。
ドイツの法令と日本の規定が食い違う点
- 抵触:ドイツに住居があればドイツの居住者、日本の住所も残る. ドイツでは、いつでも使える住居(Wohnsitz)があるだけで、重要な利害関係の中心が日本にあっても無制限納税義務を負う居住者となり(BFH I R 74/16)、最低滞在日数も必要ありません(BFH I R 58/16)。日本では、生活の本拠(住所)が日本にあるか、引き続き1年以上居所があれば居住者です。家族を日本に残して1年未満の予定でドイツに赴任した場合や、ドイツの住まいを持ったまま日本に戻った場合は、両国が居住者として課税します。日独租税協定第4条第2項(恒久的住居→重要な利害関係の中心→常用の住居→国籍→合意)でどちらか一方の居住者と判定します。
- 抵触:ドイツの6か月(年をまたいで計算)と日本の1年基準. ドイツは、暦年に関係なく6か月を超えて継続して滞在すれば、初日から居住者とします(§ 9 AO)。日本では、1年以上の予定で国外に赴任すれば通常は国内に住所がないと推定されますが(所得税法施行令第15条)、6か月~1年未満の赴任で家族や住居が日本に残っていれば、日本の住所はそのままと判断されることがあります。この場合は両国の居住者となるため、協定第4条第2項で判定します。
そのほかの注意点
- ドイツの居住者:日本の所得は原則として免除(累進留保付き). 協定上ドイツの居住者となる場合、協定により日本で課税できる所得(例えば日本で行った勤務の給与、日本の不動産所得)は、原則としてドイツの課税対象から除外されますが、残りの所得の税率を決めるときには算入されます(第22条第2項(a)・(b)、§ 32b EStG)。(a)に該当しない配当、一定の譲渡益など同項(c)に列挙された所得は、除外ではなく日本の税額をドイツの税額から控除します。
- 日本の居住者:ドイツの税は外国税額控除で調整. 協定上日本の居住者となる場合、ドイツで課税された所得(ドイツで行った勤務の給与など)も日本で申告し、ドイツの税を日本の所得税から控除します(協定第22条第1項、所得税法第95条)。控除できるのは、日本の所得税額のうち国外所得に対応する限度額までです。ドイツの税額を証明する書類(ドイツの税額決定通知書、源泉徴収の証明など)を保管してください。
- 転居の年:両国とも1年を居住期間と非居住期間に分けます. ドイツへの入国又は出国の年は、ドイツは無制限納税義務の期間の全世界所得と、その他の期間のドイツ国内源泉所得を合算し、国外所得は税率の計算に算入します(§ 2(7)、§ 32b EStG)。日本も出国の年は、居住者期間のすべての所得と非居住者期間の国内源泉所得を合わせて申告します。同じ月の所得が両国で居住者として課税されないよう、期間を突き合わせてください。
- ドイツの居住者でなくても、ドイツでの勤務の給与には課税されることがあります. ドイツの非居住者でも、ドイツで実際に行った勤務の給与はドイツ国内源泉所得です(§ 49(1) no. 4(a) EStG)。ただし、日本の居住者で、協定第14条第2項の条件をすべて満たせば日本でのみ課税されます:当該課税年度に開始又は終了するいずれの12か月の期間でもドイツ滞在が合計183日以下、雇用者がドイツの居住者でない、給与がドイツの恒久的施設の負担でない。暦年ではなく12か月の期間で数える点に注意してください。
- 社会保障:日独社会保障協定は年金のみが対象. 日独社会保障協定は2000年2月に発効し、年金の加入期間を通算できます。対象は両国の公的年金制度だけで、公的医療保険は協定の対象外です。日本から一時的に派遣される場合は、協定の例外(5年を超えない見込みの派遣)により日本の年金制度にのみ加入し、日本の機関が発行する適用証明書でドイツの年金保険の免除を受けます。医療保険は両国の制度にそれぞれ加入が必要となることがあるため、派遣前に勤務先と確認してください。
双方居住者の振り分け
両国があなたを居住者とみなす場合、租税条約第4条第2項が適用されます:日独租税協定(Agreement between Japan and the Federal Republic of Germany for the Elimination of Double Taxation with respect to Taxes on Income and to certain other Taxes and the Prevention of Tax Evasion and Avoidance、2015年12月17日東京で署名)。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順に判定し、それでも決まらない場合は両国の権限ある当局の合意によります。
ドイツで目にする用語
- Wohnsitz
- 住所。保持し利用する意思をもって有する住居(§ 8 AO)
- gewöhnlicher Aufenthalt
- 常居所。6か月を超える継続した滞在(§ 9 AO)
- unbeschränkte Steuerpflicht
- 無制限納税義務。居住者として全世界所得に課税
- beschränkte Steuerpflicht
- 制限納税義務。ドイツ国内源泉所得のみに課税
- Progressionsvorbehalt
- 累進留保。免除された所得を税率の計算に算入する仕組み
- Finanzamt
- ドイツの税務署
よくある質問
ドイツに住まいを借りていますが、家族は日本にいます。どちらの居住者ですか?
ドイツ法では住居(Wohnsitz)があるだけでドイツの居住者となり、日本法では生活の本拠が日本にあれば日本の居住者です。日独租税協定第4条第2項により、両国に恒久的住居があれば重要な利害関係の中心で判定し、家族が日本に住んでいることは日本を示す重要な事情になります。
ドイツの居住者になった場合、日本の所得はどう課税されますか?
協定第22条第2項により、日本で課税される所得(日本で行った勤務の給与、日本の不動産所得など)は原則としてドイツで免除されますが、残りの所得の税率の計算には算入されます。(a)に該当しない配当など同項(c)に列挙された所得は、日本の税額をドイツの税額から控除します。
日本の居住者のままドイツに出張する場合、何日まで日本でのみ課税されますか?
協定第14条第2項により、当該課税年度に開始又は終了するいずれの12か月の期間でもドイツ滞在が合計183日以下で、雇用者がドイツの居住者でなく、給与がドイツの恒久的施設の負担でなければ、給与は日本でのみ課税されます。
出典
法令・公式の解説
- § 1(1) EStG — ドイツに住所(Wohnsitz)又は常居所(gewöhnlicher Aufenthalt)を有する個人は無制限納税義務を負い、全世界所得に課税される。
- § 8 AO — 住居を保持し利用することがうかがわれる状況の下で住居を有する場所に、住所(Wohnsitz)がある。
- § 9 AO — 常居所とは、一時的でない滞在をいう。6か月を超える継続した滞在は、初日から常に常居所となり、短期の中断は考慮しない。例外:訪問、保養、治療その他これに類する私的な目的のみで、1年を超えない滞在。
- § 9 sentence 3 AO — 滞在が訪問、保養、治療その他これに類する私的な目的のみで1年を超えない場合は、6か月の規定は適用されない。
- § 1(3)–(4) EStG — 住所も常居所もない場合、納税義務はドイツ国内源泉所得(§ 49)に限られる。所得の90%以上がドイツで課税される非居住者は、申請により無制限納税義務者として扱われる。
- § 49(1) no. 4(a) EStG — 給与所得は、勤務がドイツで行われ又は利用(verwertet)される場合にドイツ国内源泉所得となる。
- 所得税法 第2条第1項第3号~第5号 — 居住者=国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。非永住者=居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人。非居住者=居住者以外の個人。
- 日独租税協定 第4条第2項 — 両締約国の居住者である個人は、(a) 恒久的住居を有する国の居住者とみなし、両国に有する場合は人的・経済的関係がより密接な国(重要な利害関係の中心)の居住者とみなす。(b) 重要な利害関係の中心がある国を決定できない場合又はいずれの国にも恒久的住居を有しない場合は常用の住居を有する国、(c) 両国に常用の住居を有する場合又はいずれにも有しない場合は国民である国の居住者とみなす。(d) 両国の国民である場合又はいずれの国民でもない場合は、両国の権限ある当局が合意により解決する。
- 所得税法施行令 第15条 — 国外に居住することとなった個人が、①国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合、又は②外国の国籍若しくは外国の永住許可を有し、国内に生計を一にする親族がいないなど、再び国内に帰り主として国内に居住すると推測するに足りる事実がない場合には、国内に住所を有しない者と推定する。生計を一にする同居家族も同様。
- 日独租税協定 第22条 — 第1項:日本の居住者がドイツで課税される所得を取得する場合、日本の法令に従い、ドイツの租税を日本の租税から控除する。第2項:ドイツの居住者については、(a) 協定により日本で課税される所得を原則としてドイツの課税標準から除外し、(b) 除外した所得を税率の決定に考慮できる(累進留保)。(c) 同号に列挙された所得((a)に該当しない配当、一定の譲渡益、役員報酬、芸能人等の所得など)は日本の租税をドイツの租税から控除し、(d)・(e) 一定の場合には除外に代えて控除する。
- § 2(7), § 32b EStG — 所得税は年単位で賦課される。入国又は出国の年は、無制限納税義務の期間の全世界所得と、その他の期間のドイツ国内源泉所得を合算する。国外所得や条約で免除される所得は税率を引き上げる(累進留保、Progressionsvorbehalt)。
- 所得税法 第95条;国税庁 タックスアンサー No.1240 — 居住者が外国所得税を納付する場合、控除限度額(その年分の所得税額×調整国外所得金額/所得総額)を限度として所得税額から控除し、超える部分は復興特別所得税の控除限度額まで控除する。控除余裕額・控除限度超過額は3年間繰越し可。非永住者の国外所得は国内払い・送金分に限る。条約上の限度税率を超える部分は対象外。申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を課されたことを証する書類を添付する。
- 国税庁 タックスアンサー No.1926(令和8年4月1日現在) — 国内の会社の給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には国内に住所を有しない者と推定され非居住者となる。年の中途の転出で納税管理人を指定した場合は居住者期間の全所得と非居住者期間の国内源泉所得を翌年2月16日~3月15日に申告し、指定しないで出国する場合は出国の時までに準確定申告をする。国内不動産の賃貸料は原則20.42%で源泉徴収される。
- 日独租税協定 第14条第2項 — 一方の国の居住者が他方の国で行う勤務の報酬は、(a) 当該課税年度に開始又は終了するいずれの12か月の期間においても他方の国での滞在が合計183日を超えず、(b) 報酬が他方の国の居住者でない雇用者から又はこれに代わる者から支払われ、(c) 報酬が雇用者の他方の国にある恒久的施設によって負担されない場合には、居住地国でのみ課税される。
- 日本年金機構:社会保障協定の発効時期と対象となる社会保障制度(協定相手国一覧) — ドイツ:2000年2月発効。加入期間の通算あり。対象は両国とも公的年金制度のみ(公的医療保険は対象外)。
- 日本年金機構:二重加入の防止(相手国から日本に派遣される場合) — 協定により、原則として就労する国の社会保障制度にのみ加入する。5年を超えない見込みで派遣される場合は例外として派遣元の国の制度にのみ加入する(協定によっては、見込み期間にかかわらず派遣開始から5年間を免除とするものもある)。5年を超える延長は両国の合意による。免除を受けるには派遣元の国の機関が発行した適用証明書が必要。この考え方は原則として自営業者にも当てはまる。
- EStG
裁判例
- ドイツ連邦財政裁判所(BFH)第1部, I R 58/16, 2018-07-24 — § 8 AOの住所には、住居で毎年実際に過ごす最低日数は必要なく、不定期な訪問でも住所は維持される。同時に複数の住所を持つこともできる。
- ドイツ連邦財政裁判所(BFH)第1部, I R 38/13, 2013-11-13 — 住居とは、質素なものも含め居住に適したあらゆる空間をいう。重要なのは、本人が望むときにいつでも利用でき、自らの居住のために保持していることである。
- ドイツ連邦財政裁判所(BFH)第3部, III R 6/20, 2020-11-12 — 住居を保持し利用する意思が状況からうかがわれるかどうかは、主として個々の事案の事実問題である。
- ドイツ連邦財政裁判所(BFH)第1部, I R 26/10, 2011-06-22 — 短期の中断は6か月の滞在期間に算入される。不在日数に固定の上限はなく、滞在全体の長さに照らして評価される。
- ドイツ連邦財政裁判所(BFH)第1部, I R 74/16, 2018-10-23 — 国外に住居があっても、またそれが重要な利害関係の中心であっても、ドイツの無制限納税義務は排除されない。重要な利害関係の中心は租税条約を適用する場面でのみ意味を持つ。
更新日 2026-11-04. 結果は情報提供のみを目的とするもので、税務上・法律上の助言ではありません。税務当局や裁判所は、ここで考慮していない事情も含めて異なる解釈をすることがあり、法令も改正されます。判断の前に専門家にご相談ください。