ハンガリーでの税務上の居住者判定(日本の居住者・日本人向け)
ハンガリーは、ハンガリー国民、長期滞在の権利を有する人、恒久的住居がハンガリーにだけある人、生活上の利害の中心がハンガリーにある人、それで決まらなければ暦年に183日以上滞在した人を居住者とし、全世界所得に15%で課税します。日本は住所(生活の本拠)又は1年以上の居所で判定します。日ハンガリー租税条約には振分けの基準がなく、双方居住者は両国の権限のある当局の合意で決まります。
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ハンガリーで税務上の居住者とされる場合
ハンガリーは自国民を国籍だけで居住者とし、二重国籍者はハンガリーに登録された住所がある場合に限り居住者とします。その他の人は、長期滞在の権利、恒久的住居、生活上の利害の中心又は183日の滞在で判定します。ハンガリーの課税期間は日本と同じ暦年です。
ハンガリー法は、恒久的住居がハンガリーにだけあるかを問います。日本(又は他の国)にも住居があれば、生活上の利害の中心の判定に進みます。
- ハンガリー国籍とハンガリーに登録された住所があります。所得税法により、滞在日数や住居にかかわらず、国籍だけでハンガリーの居住者です。
- ハンガリー国籍だけを有しています。所得税法により、滞在日数や住居にかかわらず、国籍だけでハンガリーの居住者です。
- ハンガリーの長期(永住)滞在の権利を有しています。所得税法によりハンガリーの居住者です。
- 恒久的住居がハンガリーにだけあります。ハンガリーの居住者です。
- 生活上の利害の中心がハンガリーにあります。ハンガリーの居住者です。
- 生活上の利害の中心を決定できず、暦年にハンガリーに183日以上滞在しました。これは常用の居所に当たるため、ハンガリーの居住者です。
非居住者となる場合
- ハンガリーの国内法上、ハンガリーの居住者ではありません。ハンガリー源泉の所得(ハンガリーで実際に行った勤務の給与を含む)には引き続き課税されます。条約上日本の居住者であれば、日ハンガリー租税条約第15条第2項の要件(暦年183日以下など)を満たす給与はハンガリーで免除されます。
ハンガリーの法令と日本の規定が食い違う点
- 衝突:両国の居住者 — 日ハンガリー租税条約には振分けの基準がありません. 日ハンガリー租税条約第4条第2項は、恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍といった判定基準を定めず、両国の権限のある当局が合意によって居住地国を決定するとだけ定めています。ハンガリー法は条約の振分けに近い順序(住居 → 利害の中心 → 183日)を国内基準として使いますが、条約上の判定基準ではありません。合意があるまでは、日本もハンガリーもあなたを居住者として全世界所得に課税し得ます。ハンガリー源泉の所得に課された税は日本の外国税額控除(第23条第1項、所得税法第95条)で、日本で課税され得る所得はハンガリーの免除又は税額控除(第23条第2項)で調整し、残る二重課税は相互協議(第25条)で解決を求めます。
- 衝突:ハンガリー国籍とハンガリーの登録住所がある場合. ハンガリー国籍とハンガリーに登録された住所(住所カード)がある人は、日本に住んでいても、国籍だけでハンガリーの居住者とされます。日本の住所があれば日本でも居住者となり、条約上は両国の権限のある当局の合意で解決するしかありません。ハンガリーの住所の登録を抹消すれば、国籍による居住者の扱いはなくなります(他の基準は引き続き適用されます)。
- 衝突:ハンガリーの長期滞在の権利(永住権). 長期滞在の権利があれば、住居や生活上の利害の中心にかかわらず、ハンガリーは自動的にあなたを居住者とします(Kúria Kfv.I.35.493/2019/7)。日本に住所があれば日本でも居住者となり、条約上の振分けは両国の権限のある当局の合意によります。
- 衝突:生活上の利害の中心がハンガリーにある. 生活上の利害の中心がハンガリーにあれば、日本に住居があってもハンガリーはあなたを居住者とします。Kúriaは家族的・経済的関係、とりわけ銀行口座やカードを日常的にどこで使っているかを重視します。日本でも1年以上の居所や住所の推定(所得税法施行令第14条)で居住者となり得るため、両国の居住者となれば権限のある当局の合意で解決します。
そのほかの注意点
- 二つの異なる基準:日本は住所・1年以上の居所、ハンガリーは国籍・永住権・住居・利害の中心・183日. 日本は、生活の本拠(住所)が日本にあるか、日本に引き続き1年以上居所があるかで居住者を判定し、滞在日数の基準はありません。ハンガリーは、ハンガリー国民(登録された住所のない二重国籍者を除く)、長期滞在の権利を有する人、恒久的住居がハンガリーにだけある人、生活上の利害の中心がハンガリーにある人、それで決まらない場合に暦年に183日以上滞在した人を居住者とします。両国の居住者となった場合、日ハンガリー租税条約は振分けを両国の権限のある当局の合意に委ねています(第4条第2項)。
- ハンガリーでの勤務の給与:日ハンガリー租税条約第15条. ハンガリーで実際に行った勤務は、雇用者が日本の会社でも(リモートワークを含む)ハンガリー源泉の所得です。条約上日本の居住者であれば、ハンガリーでの滞在が当該年(暦年)を通じて合計183日以下で、給与をハンガリー居住者でない雇用者が支払い、ハンガリーの恒久的施設又は固定的施設が負担していなければ、ハンガリーは課税しません(第15条第2項)。一つでも満たさない場合、ハンガリーが課税し、日本は外国税額控除(第23条第1項、所得税法第95条)で調整します。ハンガリーは入国日・出国日を1日と数えます。
- 二重課税の調整:日本は税額控除、ハンガリーは主に免除. 日本の居住者は、ハンガリーで課された税を日本の所得税から差し引きます(第23条第1項、所得税法第95条)。限度はその所得に対応する日本の税額です。ハンガリーの居住者については、日本で課税され得る所得(日本で行った勤務の給与など)をハンガリーが免除し(第23条第2項(a)、(c))、配当・利子・使用料は日本の税をハンガリーの税から控除します(同(b))。条約が別段の定めをするため、所得税法第32条第1項の90%控除はこれらの所得には適用されません。ハンガリーで条約の適用を受けるには、日本の税務署で居住者証明書の交付を受けて提出します。
- 社会保障:日ハンガリー社会保障協定(2014年1月発効). 日ハンガリー社会保障協定は、保険料の二重負担を防ぎ、年金の受給資格を判断する際に両国の加入期間を通算できるようにするものです。対象は日本側が公的年金制度と公的医療保険制度、ハンガリー側が公的年金・公的医療保険・公的雇用保険制度です。一時派遣で日本の制度だけに加入し続けるには、日本年金機構で適用証明書の交付を受けます。派遣期間などの要件は日本年金機構のハンガリーのページで確認してください(本パッケージでは未確認)。
- 適用される条約:1980年条約(BEPS防止措置実施条約で一部修正). 日本とハンガリーの間では、1980年2月13日に署名され1980年10月25日に発効した租税条約が適用されます。BEPS防止措置実施条約(MLI)により主要目的テストや仲裁などが加わりましたが(2022年分から)、個人の双方居住者の扱い(第4条第2項:権限のある当局の合意)と二重課税の排除の方法は変わっていません。給与は第15条(暦年183日)、二重課税の排除は第23条、相互協議は第25条です。
双方居住者の振り分け
両国があなたを居住者とみなす場合、租税条約第4条第2項が適用されます:所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とハンガリー人民共和国との間の条約(1980年2月13日署名)。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順に判定し、それでも決まらない場合は両国の権限ある当局の合意によります。
ハンガリーで目にする用語
- belföldi illetőségű magánszemély
- ハンガリーの居住者である個人。全世界所得に課税
- lakcímkártya
- 住所カード。登録された住所の証明
- huzamos tartózkodási jog
- 長期滞在の権利。これだけで居住者となる
- létérdekek központja
- 生活上の利害の中心。家族的・経済的関係で判断
- Szja tv.
- 個人所得税法(1995年法律第117号)
- NAV
- ハンガリー国税関税庁(Nemzeti Adó- és Vámhivatal)
よくある質問
日本とハンガリーの両方で居住者になった場合、どちらの国の居住者になりますか?
日ハンガリー租税条約第4条第2項は、恒久的住居や重要な利害関係の中心などの基準を定めず、両国の権限のある当局が合意で決定するとしています。合意があるまでは両国が居住者として課税し得るため、日本の外国税額控除とハンガリーの免除又は税額控除で調整し、残る二重課税は相互協議で解決を求めます。
日ハンガリー租税条約の183日ルールはどう数えますか?
第15条第2項では、当該年(暦年)を通じてハンガリーでの滞在が合計183日を超えないこと、給与がハンガリー居住者でない雇用者から支払われること、ハンガリーの恒久的施設又は固定的施設が負担しないことがすべて必要です。
日ハンガリー社会保障協定で何が変わりますか?
2014年1月に発効した協定で、保険料の二重負担を防ぎ、年金の受給資格の判断に両国の加入期間を通算できます。対象は日本側が公的年金と公的医療保険です。一時派遣で日本の制度に加入し続けるには、日本年金機構で適用証明書の交付を受けます。
出典
法令・公式の解説
- § 3 point 2(a) of Act CXVII of 1995 on Personal Income Tax (Szja tv.) — すべてのハンガリー国民は居住者である。ただし、ハンガリーに住所又は居所(登録された住所)を有しない二重国籍者を除く。
- NAV booklet 04 «Magánszemélyek külföldről származó jövedelme» (20 Feb 2026) — ハンガリー国民は、長年国外に住んでいても居住者のままである(ハンガリーに住所のない二重国籍者を除く)。居住者の区分は所得税法第3条第2号のとおり。
- § 3 point 2(c) Szja tv. — 居住者:ハンガリーに長期滞在の権利を有する第三国国民及び無国籍者。
- § 3 point 2(d) Szja tv. — その他の個人は、(da) 恒久的住居がハンガリーにだけある場合、(db) ハンガリーに恒久的住居がないか国外にも恒久的住居がある場合に、生活上の利害の中心がハンガリーにあるとき、(dc) 上記で決まらない場合に、常用の居所がハンガリーにあるとき、居住者となる。
- § 7 point 44 of Act CL of 2017 on the Rules of Taxation (Art.) — ハンガリーの常用の居所:暦年に183日以上の滞在。入国日・出国日は1日として数える。
- § 3 point 4(d) Szja tv. — 給与所得の源泉地は勤務が通常行われる場所であり、ハンガリーで実際に行った勤務(外国の雇用者のためのリモートワークを含む)はハンガリー源泉の所得となる。
- 所得税法 第2条第1項第3号~第5号 — 居住者=国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。非永住者=居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人。非居住者=居住者以外の個人。
- 日ハンガリー租税条約 第4条第2項 — 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その個人が居住者であるとみなされる締約国を決定する。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍による判定基準は定められていない。
- 日ハンガリー租税条約 第23条第1項 — 日本:日本の居住者が条約に従いハンガリーで租税を課される所得を取得する場合、その所得について納付されるハンガリーの租税の額は、当該居住者に対して課される日本の租税の額から控除する。控除の額は、日本の租税の額のうちその所得に対応する部分を超えない。
- 日ハンガリー租税条約 第23条第2項 — ハンガリー:(a) 条約により日本で課税され得る所得は、(b)及び(c)の場合を除き免除する。(b) 配当、利子、使用料(第10条~第12条)については、日本で納付される租税の額と等しい額をハンガリーの租税の額から控除する。(c) 残余の所得に対する租税の額の算定に当たっては、免除された所得を考慮に入れることができる。
- 日ハンガリー租税条約 第25条 — 相互協議:条約の規定に適合しない課税を受けたと認める者は、居住地国の権限のある当局に申し立てることができ、権限のある当局は合意によって事案を解決するよう努める。解釈・適用上の困難も合意により解決するよう努め、当局は直接通信できる。
- 所得税法 第95条;国税庁 タックスアンサー No.1240 — 居住者が外国所得税を納付する場合、控除限度額(その年分の所得税額×調整国外所得金額/所得総額)を限度として所得税額から控除し、超える部分は復興特別所得税の控除限度額まで控除する。控除余裕額・控除限度超過額は3年間繰越し可。非永住者の国外所得は国内払い・送金分に限る。条約上の限度税率を超える部分は対象外。申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を課されたことを証する書類を添付する。
- 国税庁 タックスアンサー No.2012(令和8年4月1日現在) — 国内に生活の本拠があるかどうかは、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断する。滞在日数のみで判断しないため、外国に183日以上滞在していても日本の居住者となる場合がある。双方居住者となったときは租税条約で判定し、必要に応じ両国当局の相互協議が行われる。
- 所得税法施行令 第14条 — 国内に居住することとなった個人が、①国内で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合、又は②日本国籍を有し、国内に生計を一にする配偶者その他の親族を有するなど、国内で継続して1年以上居住すると推測するに足りる事実がある場合には、国内に住所を有する者と推定する。生計を一にする同居家族も同様。
- 日ハンガリー租税条約 第15条第2項 — 一方の締約国の居住者が他方の締約国内で行う勤務の報酬は、次のすべてを満たせば居住地国でのみ課税される:(a) 報酬の受領者が当該年を通じて合計183日を超えない期間他方の締約国内に滞在する;(b) 報酬が他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われる;(c) 報酬が他方の締約国内に雇用者の有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでない。
- § 32(1) Szja tv. — 居住者の総合課税所得に、源泉地国で課税された国外源泉所得が含まれる場合、租税条約に別段の定めがない限り、ハンガリーの税額は納付した外国税額の90%(その所得に対するハンガリーの税額が限度)だけ減額される。還付される外国税額は含まれない。
- 国税庁 タックスアンサー No.9210 居住者証明書の請求 — 租税条約に基づく減免等を受けるために必要な日本の居住者であることの証明書は、所轄の税務署が発行する。居住者証明書(2部)と交付請求書を郵送又は来署で提出する。相手国が様式を定めていればその様式、なければ国税庁様式を使う。
- 日本年金機構 社会保障協定:国別の発効時期と対象となる制度の一覧(2025年10月27日更新) — ハンガリーとの協定は2014年1月発効。対象は日本側が公的年金制度・公的医療保険制度、ハンガリー側が公的年金制度・公的医療保険制度・公的雇用保険制度。加入期間の通算ができる。
- BEPS防止措置実施条約(日ハンガリー租税条約への適用;財務省「ハンガリー」のページ) — MLIは日本について2019年1月1日、ハンガリーについて2021年7月1日に発効。適用条項は第6条1・3(前文)、第7条1(主要目的テスト)、第17条1(対応的調整)、第6部(仲裁)。第4条・第5条は適用されない。源泉徴収以外の租税については2022年1月1日以後に開始する課税期間から適用。
- 財務省 租税条約一覧(2026年6月26日現在) — ハンガリー:1980年2月13日署名、1980年10月25日発効。BEPS防止措置実施条約の通告日2021年3月25日。
裁判例
- ハンガリー最高裁判所(Kúria), Kfv.I.35.493/2019/7, 2020-04-30 — 1989年から家族とハンガリーに住む永住者(letelepedett)資格のベトナム国民は、所得税法第3条第2号(c)によりハンガリーの居住者であるとされた。家族と経済的なつながりもこれを裏付け、租税条約第4条によるベトナム居住の主張は退けられた(支出と所得の比較に基づく税務調査後の所得税事件)。
- ハンガリー最高裁判所(Kúria), Kfv.I.35.013/2016/10, 2016-06-16 — 2006年からブダペストに住むジョージア国民がハンガリーの居住者とされた。生活上の利害の中心は、最も密接な家族的・経済的関係(住居、会社、雇用契約、銀行口座とカードの利用)により総合的に判断される。
- ハンガリー最高裁判所(Kúria), Kfv.I.35.118/2020/4, 2020-04-09 — ドイツに住んでいると主張した者がハンガリーの居住者とされた。生活上の利害の中心には、より密接な経済的関係、とりわけ銀行口座やカードを日常的に使っている場所が決め手となる。
- ハンガリー最高裁判所(Kúria), Kfv.VI.35.085/2017/12, 2018-01-24 — 移民許可を有し、ブダペストに登録された住居があり、家族、会社及び口座がハンガリーにある外国人は、最も密接な個人的・家族的・経済的関係がハンガリーにあるため、無制限納税義務を負う居住者であるとされた。
更新日 2026-11-04. 結果は情報提供のみを目的とするもので、税務上・法律上の助言ではありません。税務当局や裁判所は、ここで考慮していない事情も含めて異なる解釈をすることがあり、法令も改正されます。判断の前に専門家にご相談ください。