オーストリアでの税務上の居住者判定(日本の居住者・日本人向け)
オーストリアは、住居(Wohnsitz)があるか、6か月を超えて滞在すれば居住者とし、6か月を超える雇用契約・就労許可があれば初日から居住者として扱います。日本は住所(生活の本拠)又は引き続き1年以上の居所で判定します。両国の居住者となった場合は日・オーストリア租税条約(2017年署名、2019年分から適用)第4条第2項で振り分けます。オーストリアは日本で課税される所得を原則として免除し、日本は外国税額控除で調整します。
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オーストリアで税務上の居住者とされる場合
オーストリアでもドイツと同様に住居が決め手です。住所(Wohnsitz)があれば日数を数えずに居住者となります。住居がない場合は、年をまたいでも6か月を超えて滞在すれば居住者となります。
6か月は暦年内ではなく継続して数えます。オーストリアからの短期の出国(休暇、出張、帰省)は計算を一時停止するだけです。
- オーストリアに住居があります — 住所(Wohnsitz)に当たり、所得税法(EStG 1988)第1条によりオーストリアの居住者として全世界所得に課税されます。滞在がわずかでも同じです。
- オーストリアに6か月を超えて滞在しています — 常居所に当たり、初日に遡ってオーストリアの居住者です。
- 6か月を超える雇用契約又は就労許可があります — 連邦財務省(BMF)の実務により、勤務が早く終わっても滞在開始の日からオーストリアの居住者です。
非居住者となる場合
- オーストリアに住居がなく、滞在も6か月を超えていません — オーストリアの居住者ではありません。ただし、オーストリアで行った勤務の給与には同国で課税されます。
オーストリアの法令と日本の規定が食い違う点
- 抵触:オーストリアに住居があればオーストリアの居住者、日本の住所も残る. オーストリアでは、いつでも使える住居(Wohnsitz)があれば、滞在日数にかかわらず無制限納税義務を負います(§ 26 BAO、VwGH Ra 2019/15/0145)。日本では、生活の本拠(住所)が日本にあるか、引き続き1年以上居所があれば居住者です。オーストリアに住まいを借りたまま日本で暮らしている場合や、家族を日本に残してオーストリアで勤務する場合は、両国が居住者として課税します。日・オーストリア租税条約第4条第2項(恒久的住居→重要な利害関係の中心→常用の住居→国籍→合意)でどちらか一方の居住者と判定します。
- 抵触:オーストリアの6か月(年をまたいで計算)と日本の1年基準. オーストリアは、年末をまたいでも6か月を超えて滞在すれば初日から居住者とします(§ 26 BAO、所得税ガイドライン(LStR 2002)第5項)。日本では、1年以上の予定で国外に赴任すれば通常は国内に住所がないと推定されますが(所得税法施行令第15条)、1年未満の赴任で家族や住居が日本に残っていれば、日本の住所はそのままと判断されることがあります。両国の居住者となった場合は条約第4条第2項で判定します。
- 抵触:6か月を超える契約で初日からオーストリアの居住者. 6か月を超える雇用契約又は就労許可があれば、オーストリアは初日から常居所があるとし、勤務が早く終わっても同じ扱いです(LStR 2002第4項)。日本からの赴任期間が1年未満の予定であれば、日本の施行令第15条の推定(国外に住所なし)は働かず、日本の住所が残ることがあります。両国の居住者となるため、条約第4条第2項で判定します。
そのほかの注意点
- オーストリアの居住者:日本の所得は原則として免除(累進付免除). 条約上オーストリアの居住者となる場合、条約により日本で課税できる所得(日本で行った勤務の給与、日本の不動産所得など)は、原則としてオーストリアで免除されますが、残りの所得の税率の計算には算入されます(第23条第1項(a)・(c))。配当・利子など同項(b)に定める所得は、免除ではなく日本で納付した税額をオーストリアの税額から控除します。
- 日本の居住者:オーストリアの税は外国税額控除で調整. 条約上日本の居住者となる場合、オーストリアで課税された所得も日本で申告し、オーストリアの税を日本の所得税から控除します(第23条第2項、所得税法第95条)。控除できるのは、日本の所得税額のうちその所得に対応する額までです。オーストリアの税額を証明する書類を保管してください。
- オーストリアの居住者でなくても、オーストリアでの勤務の給与には課税されることがあります. オーストリアの非居住者でも、オーストリアで行われ又は利用された勤務の給与には課税されます(§ 98(1) no. 4 EStG 1988)。ただし、日本の居住者で、条約第14条第2項の条件をすべて満たせば日本でのみ課税されます:当該課税年度に開始又は終了するいずれの12か月の期間でもオーストリア滞在が合計183日以下、雇用者がオーストリアの居住者でない、給与がオーストリアの恒久的施設の負担でない。
- オーストリアのセカンドハウス. 重要な利害関係の中心が5暦年を超えて国外(例えば日本)にある場合、オーストリアの住居は、その年に70日を超えて利用したときに限り住所となります(セカンドハウス令)。利用日数の記録を付けてください。
- 研究者などの移住優遇(Zuzugsbegünstigung). 学術・研究の利益のためにオーストリアに移住する科学者・研究者は、5年間、学術的業務からの所得の30%の定額控除を申請できます(§ 103(1a) EStG 1988)。科学者、研究者、芸術家、スポーツ選手は、移住により生じる追加の税負担の除去も申請できます。申請は移住後6か月以内にFinanzamt Österreichへ行い、重要な利害関係の中心をオーストリアに移すことが必要です。国籍の条件はありません。
- 社会保障:日・オーストリア社会保障協定(2025年12月発効). 日・オーストリア社会保障協定は2025年12月に発効し、年金の加入期間を通算できます。対象は、日本は公的年金・公的医療保険・公的雇用保険、オーストリアは公的年金・公的医療保険・公的労災保険・公的雇用保険です。5年を超えない見込みで日本から派遣される場合は、適用証明書により日本の制度に加入し続けますが、オーストリアの在留許可の要件のため、同国の疾病保険にも加入が必要です(日本に住む自営業者も同様)。
双方居住者の振り分け
両国があなたを居住者とみなす場合、租税条約第4条第2項が適用されます:日・オーストリア租税条約(Convention between Japan and the Republic of Austria for the Elimination of Double Taxation with respect to Taxes on Income and the Prevention of Tax Evasion and Avoidance、2017年1月30日ウィーンで署名)。恒久的住居、重要な利害関係の中心、常用の住居、国籍の順に判定し、それでも決まらない場合は両国の権限ある当局の合意によります。
オーストリアで目にする用語
- Wohnsitz
- 住所。保持し利用する意思をもって有する住居(§ 26 BAO)
- gewöhnlicher Aufenthalt
- 常居所。6か月を超える滞在で初日から生じる
- unbeschränkte Steuerpflicht
- 無制限納税義務。全世界所得に課税
- Zweitwohnsitzverordnung
- セカンドハウス令。国外に生活の中心がある人の住居の扱い(70日基準)
- Zuzugsbegünstigung
- 研究者などの移住優遇。移住による追加の税負担の軽減
- Finanzamt Österreich
- オーストリアの税務署
よくある質問
8か月の予定でオーストリアに赴任します。どちらの居住者ですか?
6か月を超える雇用契約があれば、オーストリアは初日から居住者とします。日本では、国外での勤務が1年以上に及ぶ予定でなければ住所が国外にあるとは推定されず、家族や住居が日本に残っていれば日本の居住者のままとなることがあります。両国の居住者となった場合は条約第4条第2項で判定します。
オーストリアの居住者になると、日本の所得はどう扱われますか?
条約第23条第1項により、日本で課税される所得は原則としてオーストリアで免除され、残りの所得の税率の計算には算入されます。配当・利子など同項(b)に定める所得は、日本で納付した税額をオーストリアの税額から控除します。
日本とオーストリアの社会保障協定はありますか?
あります。2025年12月に発効し、年金の加入期間を通算できます。日本から一時的に派遣される被用者は日本の制度に加入し続けますが、オーストリアの在留許可の要件のため、同国の疾病保険にも加入が必要です。
出典
法令・公式の解説
- § 1(2)–(3) EStG 1988 — オーストリアに住所(Wohnsitz)又は常居所を有する者は無制限納税義務(全世界所得)を負い、その他の者はオーストリア国内源泉所得(§ 98)にのみ課税される。
- § 26 BAO — 住所(Wohnsitz)とは、保持し利用する意思がうかがわれる状況の下で有する住居をいう。常居所とは一時的でない滞在をいい、オーストリアに6か月を超えて滞在すると、最初の6か月を含めて常に常居所となる。
- BMF: Persönliche Steuerpflicht (2026) — 住所となるには、住居が少なくとも繰り返し利用されていることが必要である。6か月の滞在の後は、遡って無制限納税義務が生じる。
- LStR 2002 para. 3 (version of 04.12.2024) — 住所とは、住居をいつでも自分のために利用できることをいう。住民登録は一つの徴表にすぎない。雇用主が提供する、他人と共用の寝場所は住所とならない。
- LStR 2002 para. 4 — 6か月を超える就労許可又は雇用契約がある場合は、初日から常居所と無制限納税義務がある。勤務が早期に終了しても同様である。
- LStR 2002 para. 5 (version of 15.12.2023) — 6か月を超える滞在は、年をまたぐ場合も含め、初日から無制限納税義務を生じさせる。短期の出国(休暇、出張、帰省)は計算を一時停止し、その日数は算入しないが、計算をやり直すことはない。
- § 98(1) no. 4 EStG 1988 — 非居住者は、オーストリアで行われ又は利用(verwertet)された勤務に係る給与所得に課税される。
- 所得税法 第2条第1項第3号~第5号 — 居住者=国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。非永住者=居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人。非居住者=居住者以外の個人。
- 日・オーストリア租税条約 第4条第2項 — 両締約国の居住者である個人は、(a) 恒久的住居を有する国の居住者とみなし、両国に有する場合は人的・経済的関係がより密接な国(重要な利害関係の中心)の居住者とみなす。(b) 重要な利害関係の中心がある国を決定できない場合又はいずれの国にも恒久的住居を有しない場合は常用の住居を有する国、(c) 両国に常用の住居を有する場合又はいずれにも有しない場合は国民である国の居住者とみなす。(d) 両国の国民である場合又はいずれの国民でもない場合は、両国の権限ある当局が合意により解決する。
- 所得税法施行令 第15条 — 国外に居住することとなった個人が、①国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合、又は②外国の国籍若しくは外国の永住許可を有し、国内に生計を一にする親族がいないなど、再び国内に帰り主として国内に居住すると推測するに足りる事実がない場合には、国内に住所を有しない者と推定する。生計を一にする同居家族も同様。
- 日・オーストリア租税条約 第23条 — 第1項(a):オーストリアの居住者が条約により日本で課税される所得を取得する場合、(b)・(c)の場合を除き、その所得をオーストリアの租税から免除する。(b):同号に定める所得(第10条の配当、第11条の利子など)については、日本で納付した税額をオーストリアの租税から控除する(その所得に対応するオーストリアの租税の額が限度)。(c):免除した所得は、残りの所得に対する税額の計算で考慮できる(累進付免除)。第2項:日本の居住者がオーストリアで課税される所得を取得する場合、日本の法令に従い、オーストリアの租税を日本の租税から控除する(その所得に対応する日本の租税の額が限度)。
- 所得税法 第95条;国税庁 タックスアンサー No.1240 — 居住者が外国所得税を納付する場合、控除限度額(その年分の所得税額×調整国外所得金額/所得総額)を限度として所得税額から控除し、超える部分は復興特別所得税の控除限度額まで控除する。控除余裕額・控除限度超過額は3年間繰越し可。非永住者の国外所得は国内払い・送金分に限る。条約上の限度税率を超える部分は対象外。申告書に「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」と外国所得税を課されたことを証する書類を添付する。
- 日・オーストリア租税条約 第14条第2項 — 一方の国の居住者が他方の国で行う勤務の報酬は、(a) 当該課税年度に開始又は終了するいずれの12か月の期間においても他方の国での滞在が合計183日を超えず、(b) 報酬が他方の国の居住者でない雇用者から又はこれに代わる者から支払われ、(c) 報酬が雇用者の他方の国にある恒久的施設によって負担されない場合には、居住地国でのみ課税される。
- Zweitwohnsitzverordnung (BGBl. II No. 528/2003) — 重要な利害関係の中心が5暦年を超えて国外にある場合、オーストリアの住居は、70日を超えて利用した年に限り住所となる。日数の記録を付けなければならない。
- § 103 EStG 1988; BMF: Zuzugsbegünstigung — 学術・研究の利益のためにオーストリアに移住する科学者・研究者は、5年間、学術的業務からの所得の30%の定額控除を申請できる(§ 103(1a))。科学者、研究者、芸術家、スポーツ選手は、移住により生じる追加の税負担の除去を申請できる。申請は移住後6か月以内にFinanzamt Österreichへ(移住前の申請も可)。重要な利害関係の中心をオーストリアの住居に移すことが必要。BMFのページは国籍の条件を定めていない。
- 日本年金機構:社会保障協定の発効時期と対象となる社会保障制度(協定相手国一覧) — オーストリア:2025年12月発効。加入期間の通算あり。対象は、日本は公的年金・公的医療保険・公的雇用保険、オーストリアは公的年金・公的医療保険・公的労災保険・公的雇用保険。日本から一時的に派遣される被用者と日本に住む自営業者は、オーストリアの在留許可の要件のため、同国の疾病保険にも加入が必要(注記※3)。
- 日本年金機構:二重加入の防止(相手国から日本に派遣される場合) — 協定により、原則として就労する国の社会保障制度にのみ加入する。5年を超えない見込みで派遣される場合は例外として派遣元の国の制度にのみ加入する(協定によっては、見込み期間にかかわらず派遣開始から5年間を免除とするものもある)。5年を超える延長は両国の合意による。免除を受けるには派遣元の国の機関が発行した適用証明書が必要。この考え方は原則として自営業者にも当てはまる。
裁判例
- オーストリア行政裁判所(VwGH), Ra 2019/15/0145, 2020-03-05 — 住所とは、居住可能な住居をいつでも利用できる法的・事実上の可能性をいう。実際の利用頻度は問わず、最低宿泊数も必要ない(最低宿泊数を求めたBFGの判断は取り消された)。
- オーストリア行政裁判所(VwGH), Ra 2015/15/0066, 2017-11-27 — § 26 BAOの住所では、住居に対する事実上の支配が決定的で、住民登録(ZMR)や家賃の支払の有無は決定的でない。付加価値税の事件(外国人購入者の輸出免税)だが、住所の判断基準は同じである。
- オーストリア連邦財政裁判所(BFG), RV/3100198/2020, 2022-06-09 — 共用住宅内の専用浴室付きの部屋は住居に当たり、重要な利害関係の中心が米国にあってもオーストリアで無制限納税義務を負うとされた。
- オーストリア行政裁判所(VwGH), Ra 2019/15/0160, 2020-01-23 — 上告棄却。両国に住居がある場合、最も密接な人的関係は原則として家族と日常的に暮らす場所にある。外国(スイス)の居住者証明書はその国から見た居住を示すにすぎず、重要な利害関係の中心を決めるものではない。両国の事情を比較衡量しなければならない。
- オーストリア行政裁判所(VwGH), Ra 2023/13/0186, 2024-09-03 — 重要な利害関係の中心は単年ではなく数年にわたって評価される。オーストリアの住居を保持している場合、一時的な国外勤務(本件では米国)では、家族が同行していても中心はオーストリアに残る。同僚や隣人との通常の付き合いは国との人的関係に当たらない。
更新日 2026-11-04. 結果は情報提供のみを目的とするもので、税務上・法律上の助言ではありません。税務当局や裁判所は、ここで考慮していない事情も含めて異なる解釈をすることがあり、法令も改正されます。判断の前に専門家にご相談ください。